野菜の2,3年周期説は本当か?
野菜の収穫量ひいては価格は2,3年周期で上下するという説がありました。実際はどうなのでしょうか。
結論から書くと、以前はあったが現在はないということのようです。
経済学における農業、畜産の需給調整モデルとして「蜘蛛の巣モデル」(ピッグサイクル)というものがあります。
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例えば、ある農家がトマトときゅうりをどちらも100万円の売り上げを見込んで畑の半分ずつに割り当てて作付けしたとします。
その結果、トマトは平年通り100万円、きゅうりはたまたま市場全体で収穫量が少なく高い金額で買ってもらうことができ150万円の売り上げになりました。
そうすると、次の年の作付け割合はどうするでしょうか。きゅうりがその年だけたまたま高かったという事実を知らなければ、きゅうりを多めにしたくならないでしょうか。
そして、多くの農家が同じことを考えたら? その年のきゅうりの作付け量は増えるでしょう。
結局、次の年は、市場全体できゅうりの量がダブつき、値下げをしないと買ってもらえないことになります。そこで、また次の年はきゅうりを減らしてトマトを多めに、と考える農家が多くなると…
このような流れで野菜の2,3年周期が出来上がるというモデルです。
実際に昔は、農家が情報を得られず、計画的な栽培ができなかったため、このような現象が起きていました*1。年齢が高い人ほど、そう言えば昔はそうだったと記憶されているのではないでしょうか。
しかし、近年、品目ごとの生産地の集約、大規模化、情報提供、計画化が推進され、作付け量の安定化が進みました。その結果、野菜の収穫量、価格の周期変動がなくなってきたのです。
もちろん、気候条件は毎年違いますのでランダムな変動は発生しますが、それすらも輸入によってある程度の平準化(リスクヘッジ)ができるようになっています。また、野菜自体も品種改良によって気象の影響を受けにくくなる傾向です。
今後も年々、野菜の収穫量、価格の安定性は高まると考えられます。
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*1:森島賢 1978 野菜の供給と需要の価格反応